CROとは、Contract(契約する・請負う) Research(調査・研究) Organization(組織)の略で、「製薬企業や医療機器メーカーが行う臨床開発を支援する組織」のことです。
具体的には、新薬や医療機器の開発を行う企業と契約し、臨床開発に関する業務を代行する企業のことを指します。シミックやイーピーエスなどが代表的なCROです。以下では、CROが具体的にどのような業務を行っているのかについて解説します。
CRO(開発業務受託機関)とは?
CROとは?
CROとは、新薬や医療機器の開発を行う企業と契約し、臨床開発の業務を支援する組織。
CRO(Contract Research Organizationの略、(医薬品)開発業務受託機関とも呼ばれる)とは、新薬や医療機器の開発を行う企業と契約し、臨床開発に関連する業務を支援する企業のことです。製薬会社や医療機器メーカー、病院などと連携して、臨床開発の品質とスピードを向上させ、コストを削減することに貢献しています。
CROの誕生の経緯 CROの今後の展望 CROの主な業務 CROと製薬会社の関係 CROとSMOの関係 日本の主なCRO
CROの誕生の経緯
CROは、1997年4月に改正された薬機法(旧薬事法)によって、日本で法的に正式に認められました。その翌年の1998年4月には、医薬品の臨床試験の実施基準に関する省令(GCP)が全面的に施行され、治験を行う際の基準がさらに厳格化されました。
この改正を受けて、製薬会社には科学的かつ倫理的に適切な臨床試験の実施が強く求められるようになりました。その結果、日本でCROへの需要が高まり、現在では新薬の開発においてCROは欠かせない存在となっています。
新薬開発業務をCROへ委託する割合は、米国の製薬会社では約8割、欧州の製薬会社では約6割に達しているのに対して、日本の製薬会社では約3割にとどまっていると言われています。
しかし、経済産業省のCRO事業への支援や、グローバルでの臨床開発が増加していること、さらに新薬開発のコスト削減やスピード化の要請が高まっていることなどから、今後もCROへ委託する割合は増加していくと予想されます。実際、2003年以降、CROの売上高は順調に増加しています。
CROの今後の展望
CRO業界は急成長から安定成長の時代へ。
かつて、CROは100社以上が乱立していました。しかし、国際規模での競争に対応する必要が生じ、臨床開発の質とスピードの向上が中小CROの再編と淘汰を促した結果、現在の日本国内のCROの数は約30社にまで減少しました。減少した理由としては、
- 国際共同治験への対応力不足
- 臨床開発の質やスピードに対応できない
- 製薬会社が依頼を大手CROに集約する傾向
- 外資系CROの成長
などが挙げられます。将来的には、7~8社のグループに集約されると予想されています。
CRO業界全体の市場規模は、2018年に2000億円を超えました。近年はCROへのアウトソーシングの移行が一段落し、市場は成熟傾向を強めています。国際共同治験の増加が症例数の減少要因となりますが、臨床研究などが市場を活性化すると予想されています。
また、日本の治験・臨床研究の活性化に関する取り組みは、2003年の「全国治験活性化3カ年計画」から始まり、2007年の「新たな治験活性化5カ年計画」、2012年の「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」、2014年及び2020年の「医療分野研究開発推進計画(第1期、第2期)」へと続いています。取り組み内容は、日本発のイノベーションを推進し、実用化へと進展させるなど、臨床研究と治験の活性化をさらに積極的に推進する方向へと変化しています。
CROの売上高と従業員数
※CROは日本CRO協会の会員のみ。
※日本CRO協会年次業績報告書をもとに作成。
CROの主な業務
CROは、臨床開発に関するほぼ全ての業務を担当します。具体的には、臨床試験の企画支援、モニタリング、データマネジメント、統計解析、ファーマコビジランス、メディカルライティングなどが含まれます。
- 臨床試験の企画支援
- 治験実施計画書(プロトコール)に関する要素、例えばサンプルサイズの設定、治療法の割り付け、解析方法、調査表の設計などについてコンサルティングを行い、質の高い臨床試験を実施できるよう支援します。
- モニタリング
- 臨床試験に参加する医療機関の担当医師を訪問し、プロトコールの内容を説明します。
- 試験の進捗状況を確認し、必要に応じて指導や助言を行います。
- 症例報告書(CRF)の記入依頼、回収、および精査を行います。
- データマネジメント
- 臨床試験で収集されたデータの精査、固定化、および集計を行います。
- 回収された症例報告書(CRF)のデータ入力、チェック、および修正を行います。
- 統計解析
- 生物統計学の手法を用いて治験の結果を分析し、治験薬の効果や既存の市販薬と比較した効果を統計学的に証明します。
- ファーマコビジランス(安全性情報)
- 安全性情報報告手順書の作成を行います。
- 安全性情報の当局への報告や施設への報告を管理します。
- 個別の副作用症例に対する医学的評価を行います。
- メディカルライティング
- 臨床試験の実施に関わる申請書類や、薬事承認取得に必要な各種申請書類、報告書、論文などを、薬機法(旧薬事法)や各種ガイドラインを遵守して作成します。
CROと製薬会社との関係
CROと製薬会社との関係は契約形態により異なります。
~派遣契約型~
- 派遣契約型は、製薬会社に契約期間中のみCRA(臨床開発モニター)や品質管理担当者(DM、QC)を派遣する形態です。
- CROから派遣されたCRA(臨床開発モニター)や品質管理担当者は、担当するプロジェクトが終了すると、その製薬会社を訪問しなくなります。
- 臨床開発業務を受託するシステムが確立されていない中小CROや、治験途中でのコスト管理を厳しく行いたい製薬会社などでよく採用される契約形態です。
~委託契約型~/p>
- 委託契約型は、製薬会社で行われる臨床開発業務をCROが受託する契約です。派遣契約型と異なり、主にCROの社内で業務が進められます。
- 近年はCROの組織が大きくなり、臨床開発業務の質が向上したため、委託契約型が主流になっています。
- 臨床開発業務を受託するシステムが確立されている大手から中堅のCROでよく見られる形態です。
CROとSMOの関係
CROは治験依頼者側の業務を担当し、SMOは実施医療機関側の業務を担当しますが、両者とも同じ臨床開発業務に関与しています。そのため、CROとSMOが同じグループ企業であることは珍しくありません。
CROとSMOが同じグループである例 | |
CRO | SMO |
シミック株式会社 | シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社 |
イーピーエス株式会社 | 株式会社EPLink |
株式会社メディサイエンスプラニング | ノイエス株式会社 |
CROとSMOはそれぞれ独立した企業として存在する。
臨床開発の実施において信頼性の高いデータを得るためには、治験依頼者として治験を依頼し管理するCROと、治験の実施に直接関与するSMOと、それぞれの独立性が確保されている必要があります。そのため、CROとSMOが同じグループであっても、会社としてはそれぞれ独立して運営されています。
日本の主なCRO
では、日本を代表する4社のCROを下記に簡単にご紹介します。
- IQVIAサービシーズジャパン合同会社
- 本社
- 東京都港区高輪4-10-18 京急第一ビル
- 資本金
- 5000万円
- 設立
- 1993年7月
- パレクセル・インターナショナル株式会社
- 本社
- 東京都中央区新川1-17-21茅場町ファーストビル13階
- 資本金
- 1000万円
- 設立
- 1997年
別の記事でも詳しく説明していますので、さらに知りたい方はそちらもご覧ください。
- 詳しくはこちら
- CROランキング
よくある質問とみんなの回答
- Q
- 外資系CROと内資系(日系)CROの違いを教えて下さい。
- A
-
未経験からCRA(臨床開発モニター)へ転職する場合、外資系か内資系(日系)CROのどちらが良いかを悩まれる応募者が多いようです。私は外資系CRO、内資系(日系)CROのどちらも経験しておりますので、僭越ながら私なりに感じた違いやメリット・デメリットについて説明します。
年収や給与水準は外資系CROのほうが高い傾向があります。内資系(日系)CROにも年収や給与水準が高いCROは存在しますが、少ないと思います。理由はいくつかありますが、やはりグローバルに展開しているクインタイルズなどのCROは競争力が高いため製薬会社に対して強い価格交渉力を持っている点が最も大きいと思います。プリファード契約などの優先契約を交わしていることも多く、高い単価での受注が可能です。他にも外資系は業務の効率化が進んでいるため、CRA(臨床開発モニター)一人あたりの業務効率が高いことも影響していると思います。
それに対して内資系(日系)CROはグローバルにおける価格競争力が弱く、業務の効率化も進んでいません。また、臨床開発以外の業務も幅広く手がけているCROも多いため、どうしても給与水準が低くなりがちです。その証拠に内資系(日系)CROでもリニカルなどの領域集中型のCROは他の内資系(日系)CROよりも高い給与水準を維持しています。
ただし、業務の効率化が進んでいるということは、無駄な作業が少ないことを意味します。事実、外資系CROは業務の効率化を進めるあまり、横の人間関係が希薄になっている部分があります。ラインマネージャーなどの横野つながりをフォローするための担当者も設けたりしていますが、人数不足は否めず細かい点までフォローできていないのが実情です。
- Q
- CRO業界は今後も成長すると思いますか?
- A
-
IT化の流れもあり、モニターが施設に訪問する必要性が今後なくなっていくことでしょう。例を挙げますと、リモートSDVがあたります。
そうなれば、モニターを多く在籍させるCROは減り、業界自体は少数精鋭で運用していく流れになっていくことでしょう。
現在、業界自体は成長の流れを強くアピールしていますが、10年後は厳しいかと思います。
- Q
- 外資系CRO各社の特徴と強みについて
- A
-
正直、いちCRAとして勤務するならば、各社を差別化する要素というものは無いです。
余計なお世話かもしれませんが、新卒の方向けにお伝えするならば、外資大手で昔から新卒を採用し続けているIQVIA、パレクセル、新日本科学PPD以外は正直考えないほうがいいと思います(他の外資は経験者が年収アップや上のジョブタイトルに就く事を狙って入ってくる会社です)
私個人の偏見が入っていますが、以下のような特徴があるイメージです。
IQVIA:給料はまずまず高い。とにかく忙しいが、激務の中で成長したいなら良い選択肢だと思う。職務経歴書に書ける経験は増やせる。新卒はLMを目指しやすいがCPMは目指しにくいイメージ。
パレクセル:給料は安いが、業務量もそこそこ。社員は穏やかで優しい人が多いイメージ。
PPD:給料は安いが、社員同士の人間関係は良いイメージ。業務量やキャリアパスはよくわからない。
コーヴァンス、サイネオス、アイコン:経験中途に対する金払いは良いが、人によって会社との相性は分かれる。教育体制はどこも皆無。
クリニペース、エグゼクファーム、メドペース:給料以外に良い話を聞いたことがない
PRA:知り合いがいないので不明
- Q
- 大手CROと中小CROの違いを教えてください。
- A
-
大手CROのほうが有利だと思います。経営的な面から見ると資金力の差が大きいと思います。
臨床開発のプロジェクトは常に計画通りに進むわけではなく、中止や延期になったりすることがしばしば発生します。その際に中小CROは資金的な余力がないため、資金繰りが苦しくなってしまいます。そのため、中小CROは経営的に苦しくなってしまうことが多いようです。
ただし、中小CROであっても外資系は資金的な余力が大きいため、経営面での影響はないようです。
- Q
- 外資系CROの売上高ランキング
- A
-
外資系CROは合併を繰り返した結果、2023年現在では6グループへと集約されています。
IQVIAとCovance (LabCorp Drug Development) がTOP2です。加えて、PPD (Thermo Fisher Scientific)、ICON-PRA、Syneos Health、PAREXELの4社を含めてグループ6強と言えます。
次点はMedpaceですがPAREXELとの差は大きく、日本のEPSやCMICとあまり規模が変わりません。
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1位 IQVIA
Durham, NC [https://iqvia.com]
IQV $13.87B、88,000 人の従業員、100カ国、Full-service, end-to-end service provider
2位 Covance (LabCorp Drug Development)
Princeton, NJ [https://www.labcorp.com/]
LH $11.5B、70,000 人の従業員、100カ国、Preclinical, clinical, post-marketing/ pharmacovigilance
3位 PPD (Thermo Fisher Scientific)
Morrisville, NC [https://ppd.com]
TMO $4.6B、27,000 人の従業員、75拠点、48カ国、Early development, Phase III-IV trial management
4位 ICON-PRA
Dublin,Ireland [https://iconplc.com]
ICLR $5.48B、37,000 人の従業員、90カ国、Full-service, end-to-end service provider
5位 Syneos Health
Morrisville, NC [https://syneoshealth.com]
SYNH $5.2B、28,000 人の従業員、91オフィス、44カ国
6位 PAREXEL
Waltham, MA [https://parexel.com]
$4.7B、18,900 人の従業員、75拠点、40カ国、Full-service, regulatory and consulting
7位 Medpace
Cincinnati, OH [https://medpace.com]
MEDP $1.14B、4,500 人の従業員、6大陸のオフィス、Early phase, Phase II-IV, drug, device, and diagnostics
順位 会社名
場所 URL
売上 特徴
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Applied Clinical Trials • March 2022を修正
- Q
- CRO業界の魅力について教えて下さい。
- A
-
CROは製薬メーカーの下請けのようなイメージをもたれる方もいますが、現在のCRO、特に大手は大手製薬メーカーをしのぐ従業員数となっており、教育体制も充実しています。
なぜ、今後もCRO業界が順調に成長していくかというと、製薬メーカーは今までの低分子薬を中心とした開発から、生物学的製剤、再生医療製品など、新薬の開発難易度が高い分野へと移行しています。
そうなると臨床試験の中止率が高くなるため、以前に比べて臨床試験関連の人員需要が安定せず、どうしても業務量に波が出てきます。そのような人員需要を的確に補うためにCROの皆さんが活躍しています。
また製薬メーカーの中には、自社でCRA(臨床開発モニター)を抱えずに、特定のCROと提携してグループ会社のように業務を進めているところもあります。
日本は欧米に比べて全体の委託率が低くなっていますので、今後もCROへの受託率は伸びていくと思われます。
- Q
- 内資系CRO業界の将来性
- A
-
最新の調査では日本のアウトソーシング率はアメリカなどにほとんど追いついているというデータもあるそうです。そのため、日本のCROの採用数が減少しているという理由もあると思います。日本のアウトソーシング率が増加するというデータはだいぶ前のものでは?
地方支社は人員が少ないところはなくなるかもしれません。ただし、地方でも東京や大阪と同じ仕事ができますから、すぐになくなることはないと思います。
- Q
- ワークライフのバランスを重視したCROの選び方を教えてください。
- A
-
臨床開発モニター(CRA)の忙しさは試験の立ち上げなど、担当するプロジェクトの状況にもよりますが、やはり遠方への出張があるのかないのかで、実質的な拘束時間や身体への負担が変わってきます。
会社によっては出張エリアを居住地やオフィスの所在地から近距離(片道1時間半程度まで)に限定した、エリア限定モニター制度を設けています。エリアを限定すれば出張の効率も上がりますし、出張先から直帰する場合に早めに帰宅することも可能です。
ただ応募の際には、ワークライフバランスを重視したいことを前面に押し出すのではなく、プライベートの時間をしっかりと確保することで、英語の勉強をしたり、異業種交流会に参加するなど、自らを成長させることをアピールすればよいと思います。
- Q
- CRO各社の特徴と求人のニーズを教えてください。
- A
-
口コミなどから調べてみました。
参考にしてください。
・IQVIA
外資系だけあって高い年収や大きなやりがいに満足を感じている人が多いようです。反面、ドライな人間関係は人によって向き不向きがあるようです。
・イーピーエス
整っている福利厚生に対する評価がとめても高いです。特に育児休暇明けのママさんからは大きな支持を受けているようです。反面、年収については不満に感じている人もチラホラいるようです。
・シミック
丁寧な教育研修に対する評判が高いようです。CRA未経験者でも安心して働けるとのこ声が多いです。また、残業も結構少なく、人間関係も良いと感じている人が多いようです。不満は年収の低さに集中していました。
・パレクセル
やりがいがとても高いことが特徴のようです。キャリアを積みたい人が多いようです。また、アットホームな人間関係を心地よく感じる人もいるようです。反面、英語中心の利用しにくい教育研修システムや上がらない年収に対すして不満を持っている人もいらっしゃるようです。
・エスアールディ
高い年収と働く人に利用しやすい福利厚生や休日に満足している人が多いようです。人間関係も良好なようです。ただし、出世しにくいと感じている人も多いようで、仕事に対するやりがい度は低いようでした。