治験コーディネーター(CRC)がCRA(臨床開発モニター)へ転職する際には、治験コーディネーター(CRC)の経験内容をきれいにまとめるだけでなく、「CRA(臨床開発モニター)へなりたい意欲」が伝わる職務経歴書を作成する必要があります。
こちらでは「SMO・病院」での経験をどのように職務経歴書にまとめれば良いかを解説します。「経歴要約」「職務経歴詳細」「生かせるスキル」「自己PR」のそれぞれをサンプル付きで解説しますので、CRA(臨床開発モニター)を目指す治験コーディネーター(CRC)さんはご参考ください。採用担当者に「是非、会ってみたい」と思ってもらえる職務経歴書を作りましょう!
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治験コーディネーター(CRC)の職務経歴書
良い職務経歴書は「3つの役割を」果たす
- 採用担当者に「会いたい」と思わせる。
- 採用担当者に「質問したい」と思わせる。
- 採用担当者に「良い人物だった」と思い出させる。
良い職務経歴書は3つの役割を果たします。まず一つ目が
- 採用担当者に「会いたい」と思わせること
です。書類選考に通過するためには、まずは採用担当者に「会って話をしてみたい」「会ってどのような人物かを確認したい」と思ってもらう必要があります。そのためには、職務経歴書には採用担当者が興味を持つ事柄を、分かりやすく書く必要があると言えるでしょう。二つ目は
- 採用担当者に「質問したい」と思わせること
です。採用担当者に「この経歴について、より詳しく聞いてみたい」「この部分について質問したい」と思ってもらう必要があります。そのためには、アピールポイントを簡単な表記のみにとどめ、詳しくは面接で説明するという戦略も必要になるかもしれません。最後は
- 採用担当者に「良い人物だった」と思い出させること
です。内定を取得するためには、他の応募者と比較して「あの人物は良かった」と思い出してもらう必要があります。面接が終わり、採用・不採用かを決定する場面で、採用担当者の肩を押すような職務経歴書が好ましいと言えます。
では、以下で職務経歴書のそれぞれの部分の書き方について詳しく見ていきましょう。
- 1 タイトル・日付・氏名
- 2 キャリアの要約
- 最初に経歴の要約を書くことにより、採用担当者に職歴の全体像を分かりやすく伝えます。
- 3 職務経歴
- 職務経歴の詳細を分かりやすく記入します。
- 4 生かせるスキル・自己PR
- 最後にCRAとして生かせるスキルと自己PRを書いてまとめます。
- スペースが余るようでしたら、取得資格を書いても良いでしょう。
- Q
- 職務経歴書は何枚にまとめればいいの?
- A
- 2枚以内にまとめましょう。理由は採用担当者も忙しいため、見やすくて分かりやすい職務経歴書を好むからです。転職が初めての方は1~2枚、その他の方は2枚以内を目安にまとめましょう。
実際に3枚以上の職務経歴書の応募者の選考に通過する確率は、職務経歴書が2枚の人よりも低くなっているというデータもあります。
独力のみで職務経歴書を作成すると、色々な要素を詰め込みすぎて、自分以外の人には分かりにくい書類になってしまうことも多いようです。そのようなときは周囲のどなたかに見てもらうと、客観的に自分の職務経歴書を見直すことができます。
職務経歴書の枚数
※CRAばんく経由で転職をした25名のデータをもとに作成(調査期間:2015年4月~2024年11月、有効回答数:N=25)。
タイトル・日付・氏名の書き方
- 5 タイトル
- 冒頭に大きく「職務経歴書」と記入します。
- 6 日付
- 提出日の日付を記入しましょう。
- 履歴書全体で西暦か元号表記かを統一するとすっきりします。
- 7 氏名
- パソコンなどで作った職務経歴書を印刷して使う場合、氏名を手書きにすると書類の信用度が高まります。
経歴要約の書き方
- 8 経歴要約
- 最初にあなたの職務経歴を3~5行にまとめたものを記入します。長すぎるのも短すぎるのも良くありません。
- 4~5つ以上の職歴がある場合は、分かりやすくするために箇条書きにするのも良いでしょう。
- 「です・ます」と「だ・である」の文章が混在することは避け、どちらかに統一しましょう。
- 9 要約ではアピールできる経歴を優先して記入する
- 経歴の要約には「病院名」や「SMO名」だけでなく、何を経験したかを簡潔に書きましょう。
- 「新規事業の企画」「業務改善」「教育担当」「リーダー業務」など、アピールになるものを優先して書きましょう。
職務経歴詳細の書き方
- 10 職務経歴詳細
- 「SMO・病院名」「働いていた期間」は太字にしたり、四角で囲ったりして目立たせるようにすると、全体が見やすくなります。
- 仕事の内容は箇条書きにすると見やすくなります。
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- Q
- 退職理由を書くべきかどうか迷います。
- A
- 退職理由の内容によって書くべきか、書かないべきかを判断します。職務経歴書に書いて良い退職理由は、面接官が納得できる「やむを得ない理由」のみです。
例えば、「家庭の事情で介護が必要になった」「結婚」「出産・育児」「配偶者の転勤」「会社の倒産」「病院の閉鎖・業務縮小・移転」などは書いたほうが良いでしょう。「他の分野を経験したい」という理由は、前職の在籍期間が3年以上あれば書いても良いでしょう。
しかし、「仕事が単調」「正社員になれない」「上司や同僚と人間関係が悪化」「給与が低い」「残業が多い」「通勤時間が長い」「休みが少ない」「他の職場を経験したい」などの退職理由を書くことは避けたほうが無難です。
また、同じ職務経歴書に退職理由が書いてあったり、なかったりする混在は避け、「書く・書かない」を統一する必要があります。
- Q
- 契約社員での就業経験はどのように書けばいい?
- A
- 雇用形態は職務経歴書に書く必要はありません。治験コーディネーター(CRC)は契約社員として雇用され就業をしていることもあるため、雇用形態を職務経歴書に書くべきかどうかを迷うことが多いようです。CRA(臨床開発モニター)に転職が決まった人の多くは職務経歴書に雇用形態を書いていないようです。
- 11 SMOや病院の概要を調べて記入する
- 会社の場合は「事業内容」「従業員数」「資本金」「設立」「本社所在地」などを調べて記入します。
- 病院の場合は「病院の種類」「病床数」「職員数」「所在地」「配属部署」などを記入します。
病院の種類 | |
開設者別 | 大学病院、国立病院、公立・公的病院、一般病院 |
機能別 | 特定機能病院(400床以上)、地域医療支援病院(200床以上)、地域密着型病院(その他) |
救急指定別 | 一次救急、二次救急、三次救急 |
病床数別 | 病院(病床数20床以上)、クリニック・診療所(病床数19床以下) |
- 12治験コーディネーター(CRC)の仕事内容を詳細に記入する
- 最初に「仕事の内容を一行でまとめたもの」を書くと分かりやすくなります。
- 治験コーディネーター(CRC)の職歴はできるだけ詳細に記入します。
- 試験ごとに以下の内容を全て記入します。・施設の種類(大学病院、専門クリニックなど)
・試験の件数
・試験の種類(治験、臨床研究、市販後調査、食品など)
・領域(オンコロジー、腎臓、精神など)
・対象疾患(肺がん、糖尿病、うつ病など)
・剤形(内服薬、注射剤など。省略可)
・国内、グローバル/国際共同治験
・期間(半年、約3年、●年●月~●年●月)
・進捗(配属前から進行中の試験、現在も進行中、開発中止など。省略可)
・相(二相、三相など)
・組み入れ数と投薬数(人or件、被験者数や症例登録数でも可、CRC経験が5年以上の方は省略可)
・目標症例数、契約症例数、追加症例数(人or件、CRC経験が5年以上の方は省略可)
・脱落数、中止数、逸脱数、達成率(省略可)
・チームの人数(CRC以外も含んだ人数、CRCのみの人数)
・役割(メイン・サブ)
・役職(課長、主任、リーダーなど) - 経験のある業務内容を全て記入します。・IC(インフォームド・コンセント)
・被験者の登録
・治験薬の搬入と回収、検体キットの準備
・症例報告書(CRF)の作成支援、EDC入力
・SDV(原資料との整合性のチェック)
・SAE(重篤な有害事象)の対応
・補償の対応
・クエリの対応
・試験立ち上げ(初回IRB資料の作成、スタートアップミーティングの準備など)
・IRB運営の補助(各種の資料作成、スケジュールの調整など)
・モニタリングの対応
・監査(内部、FDA、EMA、PMDA/GCP実地調査)の対応
・安全性情報資料の作成
・終了報告書の作成支援 - 教育・指導業務は「内容」や「人数」も書きましょう。
- 「マニュアル作成」「リーダー経験」などはアピールポイントになります。忘れずに書きましょう。
- Q
- 「組み入れ数と投薬数」と「被験者数や症例登録数」のどちらが良いでしょうか。
- A
- 治験コーディネーター(CRC)経験が短い方は、携わった件数を正確に伝えられる「組み入れ数と投薬数」のほうが選考を有利に進められることが多いです。なぜなら、試験が不調のため組み入れ数が5件でも投薬数が0件だったり、逆に、途中から参加したため組み入れ数が0件であっても投薬数が5件だったりすることもあるからです。(記入例:「組み入れ数◯件、投薬数◯件、目標数◯件」「組み入れ数◯例、投薬数◯例」「契約数◯例+追加◯例」)
CRC経験が2年を超える方は「被験者数や症例登録数」のほうが読みやすい職務経歴書になることが多いです。(記入例:「被験者数◯人」「症例登録数◯/◯例」「症例数◯例」)
ご自身の経験や状況に適した書き方を臨機応変に選ぶことが大切です。
- Q
- 正確な症例数が分かりません。
- A
- 記憶が曖昧であっても、思い出すなり、昔の資料を探すなどして「およそ●件」「約●件」「全体で●件」などのよう書かれたほうが、選考を有利に進められることが多いです。なぜなら、試験数が同じ1件でも症例数が1件と100件では評価が全く異なるため、面接では症例数を必ず聞かれるからです。
職務経歴書に症例数を書かない場合でも、面接で聞かれたときに症例数を回答できるように記憶を整理しておきましょう。
- Q
- 試験の期間は、全体と携わった期間のどちらを書けば良いでしょうか。
- A
- 携わった期間を記入しましょう。試験に途中から参加された場合は、「途中から参加」「配属前から進行中の試験」などのように記載しておきましょう。
- Q
- 医療機関名、治験薬の名称、治験薬の記号を記載しても良いでしょうか。
- A
- 医療機関名は記載していただいても構いません。記載しない場合は、施設の種類(例:大学病院、民間病院、クリニックなど)を記載しておきましょう。
治験薬の名称や記号の記載は避け、代わりに領域(例:がん、糖尿病)や疾患の種類(例:肺がん、インスリン抵抗性糖尿病)を記載することをおすすめします。
- 13 学んだことや得たことを書く
- 会社・病院で「学んだこと」「得たこと」「心がけていたこと」などを書いてアピールしましょう。
- 14 学会発表もアピール材料になる
- 研究・学会発表の経験がある人は「テーマ」や「内容」も書きましょう。
CRAとして生かせるスキルの書き方
- 15 CRAとして生かせるスキル
- CRA(臨床開発モニター)の書類選考の通過率を大きく左右する部分です。
- 過去のどの経験がCRA(臨床開発モニター)として生かせるかを具体的に書いていきましょう。
- 最低でも3つ以上は書きましょう。
- Q
- CRAとして生かせるスキルの書き方を教えて
- A
1)まずはCRA(臨床開発モニター)として生かせると考えられる経験やスキルを箇条書きで書き出します。
2)治験コーディネーター(CRC)の場合は「治験・GCPの知識」「治験業務の理解」「コミュニケーション能力」「プレゼン能力」「継続して学習する能力」「交渉力」「疾患や薬の知識」「スケジュール調整能力」「効率よく業務がこなせる」「分かりやすい文章が作成できる」「問題解決力」「医療従事者や患者様の気持ちの理解」「英語の素養」などがあります。
3)どのような場面で、その経験やスキルを身につけたかを書きます。
4)その経験やスキルがCRA(臨床開発モニター)としてどの場面で生かせるかを具体的に書いてまとめます。
自己PRの書き方
- 16 保有資格
- 職務経歴書のスペースが余っている場合は空いているスペースに保有資格を記入しましょう。
- 職務経歴書が3枚になりそうな場合は保有資格を消して、2枚以内になるように調整しましょう。
- 17 自己PR
- 自己PRには「自分の長所」や「転職先で役立つ経験」を記入します。
- 5行以上の文章量が必要です。文章量が少ないと採用担当者にあなたの熱意を疑われてしまいます。
- 自己PRのテーマはできれば一つ、多くても二つにしぼりましょう。テーマが三つ以上になると、内容が分かりにくくなります。
- CRA(臨床開発モニター) はコミュニケーションスキルが問われることが多いため、これまでの仕事でどのようなコミュニケーションスキルを習得したか、コミュニケーションのどのような部分に自信があるかを具体的に書くと良いでしょう。
- 他には「患者様と信頼関係を構築するために心がけていること」「医者との上手な接し方」「治験コーディネーター(CRC)業務で身につけたデータの収集方法や分析能力」「治験コーディネーター(CRC)経験を通して得たこと」「相手の表情・言動・行動の変化を読み取る観察力」「ストレス対処法」などを書いても良いでしょう。
- Q
- 自己PRの書き方を教えて
- A
1)自己PRを作るには、まず自分の「自慢できること」「夢中になったこと」「苦労してやり遂げたこと」「長所」「心がけていること」「熱意がある部分」などを書き出します。
2)その中から、応募する企業や職種にマッチすると思われるアピールポイントを一つ、もしくは二つ選びます。
3)選んだアピールポイントに具体的なエピーソードを付け足します。エピソードを書くことによって、あなたのアピールポイントが事実に裏付けられるため、より説得力を増すことになります。
4)そのアピールポイントが仕事でどのように活用できるかを書き加えてまとめます。
自己PRで最も重要なのは論理的な文章であること!
自己PRに感動的なエピソードを書くことによって、他の応募者より良い評価をもらうことはほとんどの応募者にとって難しいと言えます。
なぜなら、どのような応募者も経験されていることは大きく違わないため、エピソードが似てしまうからです。
あなたが経験できることは他の治験コーディネーター(CRC)も経験できることがほとんどなのです。
自己PRのエピソードに差がないのであれば、どれだけ分かりやすく書けているかでもらえる評価が異なることになります。
つまり、多くの応募者にとって良い自己PRとは分かりやすく書かれている自己PR、つまり「論理的に説明できている自己PR」になります。
論理的な自己PRとは文のつながりがずれていない自己PRのことです。文のつながりがずれていないと、分かりやすくて説得力の高い印象を与えることができます。逆に論理が破綻していたり、伝える順番がおかしかったりすると、分かりにくくて説得力の低い内容になります。
また、余計な内容が書かれていたり、接続詞が正しく使われていなかったりすると、そもそもの国語力を疑われてしまいます。結論が分かりやすくまとめられていることも重要です。
自己PRを書き上げた後に、➀論理が破綻していない ②伝える順番がおかしくない ③余計な内容が書かれていない ④結論が分かりやすくまとまっている ⑤接続詞や句読点が正しく使われている などを満たしている論理的な自己PRになっているかを確認しておきましょう。
CHATGPTなどのAIを利用して自己PRを作成してもよいでしょうか?
AIを補助として使うのはOK!
自己PRを仕上げる際に、CHATGPTなどのAIを利用して、誤字脱字のチェックや文字数の調整、敬語の使い方などを確認することはおすすめです。応募者自身が見落としがちな点を指摘してもらえるでしょう。
また、具体性を高めるためのヒントや、新しいアイディアを得るために利用することもできます。
AIに自己PRをゼロから作成させるのはNG
ただし、CHATGPTなどのAIに自己PRをゼロから作成させることはおすすめしません。自己PRは応募者の経験や価値観に基づいて作成するものですが、AIでゼロから作成した自己PRには、応募者の経験や価値観が反映されません。
また、面接の際に自己PRについて詳しく聞かれることもあります。「いつ、どのような状況でその考えに至ったのですか?」「なぜそう感じるようになったのですか?」など、より詳しい説明が求められます。
したがって、AIを使用して完璧に見える自己PRを作成しても、それが応募者自身の経験や考えと一致していない場合、面接官からの質問に答えられず、結果として不採用になる可能性が高くなります。
封筒の書き方
- 20 住所
- 都道府県から正確に記入しましょう。(応募書類を持参する場合は不要)
- 丁寧な字で書きましょう。採用担当者は封筒もチェックしています。
- 21 あて先
- ㈱などの略字は使わず、正式名称を書きましょう。
- 22 応募書類在中
- 封筒の左下に「応募書類在中」と赤字で記入し、四角で囲みましょう。
- 23 切手
- 切手はまっすぐに貼りましょう。(応募書類を持参する場合は不要)
- 郵便料金が不足しないように注意します。
- 急ぐ時は郵便局に行って、速達にしてもらいましょう。
- 24 封筒の種類
- 茶封筒は避け、白い封筒を使用しましょう。
- 面接当日に「応募書類の原本を持参してください」と言われた場合にも、白い封筒を使用しましょう。茶封筒やクリアフォルダーを使用することは避けましょう。
- 封筒のサイズは小さいもの(長形3号・洋形長3号(120×235)、長形4号(90×205))、大きいもの(角形1号(270×382)B4判、角形2号(240×332)A4判)のどちらでもOKです。封筒の大きさによる選考への影響は全くありません。小さい封筒を使用する場合は応募書類を三つ折にして入れます。