CRA(臨床開発モニター)の仕事内容とやりがい

CRA(臨床開発モニター)の仕事内容とやりがい

CRA(臨床開発モニター)は、治験を実施する際に遵守すべき基準であるGCPや治験の計画書に従って、治験が適切に行われるように監視(モニタリング)する仕事です。製薬会社や病院で働くさまざまな職種の方と協力して業務を行います。

この記事では、現役のCRA(臨床開発モニター)の声や現場の裏話、写真やイラストを交えて、CRA(臨床開発モニター)の仕事内容を分かりやすく解説しています。「CRA(臨床開発モニター)って何をする人?」「CRA(臨床開発モニター)の仕事内容が分からない!」という方は、ぜひご覧ください。

01治験の開始

いよいよ治験が始まります。頑張りましょう!!

医療機関の関係者に治験の内容を説明した後、治験薬を渡します。

治験の開始

医療機関への治験の説明

勉強会

治験について説明するため、医療機関で勉強会を開催します。

この勉強会では、治験薬やプロトコール(治験実施計画書)、SOP(標準業務手順書)の詳細について説明します。特に治験コーディネーター(CRC)とは、全ての疑問点が解消されるまで、繰り返し打ち合わせを行います。

勉強会には、治験責任医師や治験コーディネーター(CRC)だけでなく、看護師・臨床検査技師・薬剤師・事務局担当者など多くの関係者が参加します。

《 SOP(標準業務手順書)の主な内容 》

  • 治験実施計画書
  • 治験薬概要書
  • 安全性情報の取り扱い
  • 治験薬の管理
  • モニタリング全般
  • 監査

《 プロトコール(治験実施計画書)の主な内容 》

  • 治験の概要
    1)目的
     ・対象患者、治験薬名、投与量、投与期間、目指す効果など
    2)対象
     ・選択基準(性別、年齢など最低限満たさなければならない条件)
     ・除外基準(合併症、基礎疾患、アレルギー、妊婦など治験に参加できない条件)
    3)被験者への説明と同意に関する記述
    4)目標症例数
    5)治験実施期間
    6)治験薬剤
    7)治験方法及び投与方法
  • 治験計画の背景(開発の経緯、毒性作用、薬理作用、先行試験の結果など)
  • 治験の方法
    1)治験の種類
    2)治験のスケジュール(投与期間など)
    3)被験者の募集・登録方法
    4)投与方法 など
  • 治験の中止、脱落基準
  • 被験者の機密保持(被験者は識別コードを使用、実名は症例報告書には記録しない)
  • データの解析方法

《 治験薬概要書の主な内容 》

  • 薬の開発経緯
  • 薬の性質や組成
  • 前臨床試験の結果(薬の効果や安全性など)
  • 海外の臨床薬理試験のデータ

現役CRAのコメント15
CRA(臨床開発モニター)は、治験責任医師や担当医師、施設スタッフなどと信頼関係を築く必要があります。

最初は訪問頻度を多くしたり、治験コーディネーター(CRC)と相談しながら医師の性格を把握したり、メールの書き方や病院特有のマナーなどに気をつけながら、信頼関係を築いていきます。診察の邪魔をして、医師を不機嫌にさせることは避けましょう。
現役CRAのコメント20
治験のSOP(標準業務手順書)作成に携わるようになったら、CRA(臨床開発モニター)として一人前と言えるでしょう。

治験薬の交付

治験薬

CRA(臨床開発モニター)は、治験薬管理手順書に従って薬剤部の治験薬管理者に治験の内容を説明した後で、治験薬を渡します。特にプロトコール(治験実施計画書)の逸脱となる禁止併用薬については、丁寧に説明を行います。

同じ病院で複数の治験が行われている場合は、薬剤部が混同しないように、治験名や薬効群別、五十音順などで一覧表を作成するなど、分かりやすい管理方法を提案する必要があります。また、指定された温度での管理を適切に行うよう指導します。

《 治験薬管理手順書の主な内容 》

  • 名称・剤形・成分など
  • 用法・用量など
  • 取り扱い方法
  • 処方方法
  • 回収方法

現役CRAのコメント4
治験のプロトコール(治験実施計画書)逸脱の中で特に多いのは「併用禁止薬の違反」です。治験が行われていない診療科から禁止併用薬が処方されないよう、薬剤部には十分に注意を促しておきましょう。また、治験コーディネーター(CRC)との連携も重要です。
現役CRAのコメント25
かつては、CRA(臨床開発モニター)が治験薬保管施設から医療機関に治験薬を運んでいました。しかし、現在では運搬は専門の運送業者に任せるのが一般的です。

各関係者との調整

関係者との調整

CRA(臨床開発モニター)は、治験をスムーズに進めるために、様々な立場の人と情報交換を行います。

CHECK各関係者と打ち合わせが必要な内容

  • 病院の長・・治験を始めるときや、重要な情報を報告
  • 治験責任医師/PI・・治験が適切に行われているかを全体的に確認
  • 治験分担医師/SI・・治験が適切に行われているかを個別に確認
  • 医事課・・費用
  • 薬剤師/治験薬管理者・・服薬のスケジュールや方法
  • 臨床検査技師・・検査項目や検査スケジュール
  • 放射線技師・・検査項目やフィルムの扱い
  • 看護師・・患者の対応方法
  • SMA・・書類の管理方法
  • CRC・・治験において終始情報を共有する
  • DM・・データに不備がある場合は修正の指示を求める
  • PV・・医薬品の安全性情報を確認
  • QC・・モニタリング報告書などについて不備がある場合は指示を求める
  • 開発企画・・治験実施計画書(プロトコール)の内容を確認
  • MW/薬事・・申請書類や報告書の作成の際にアドバイスを求める

CRAが関わる人達

PV・DM・CRC・SMAの仕事内容はこちら

02被験者の登録促進

目標症例数を達成するためには多くの被験者が必要です。

被験者の登録を促進します。

被験者の登録促進

被験者登録の促進

インフォームド・コンセント

治験を行う際に困難な場面の一つが被験者の登録です。CRA(臨床開発モニター)は様々な方法で、被験者の登録を促進します。

詳しくはこちら
被験者スクリーニング

CHECK被験者の登録促進の具体例

  • 登録基準に該当する被験者が少ない場合
    治験担当医師に協力をお願いしたり、電子カルテのスクリーニングを行ったり、ボランティアや広告を利用するなどして、被験者の登録数を増やします。

  • 登録基準に該当する被験者はいるが、治験への参加に同意してくれない場合
    治験への参加を促すための資料を用意したり、治験コーディネーター(CRC)と相談してインフォームド・コンセントの方法を見直したりして、治験への参加率を高めます。

現役CRAのコメント5
CRA(臨床開発モニター)は、直接患者さんに治験の説明をすることはできません。そのため、治験責任医師や治験コーディネーター(CRC)が仕事をしやすい環境づくりをすることが、CRA(臨床開発モニター)の重要な役割になります。
現役CRAのコメント11
優秀なCRA(臨床開発モニター)は、被験者の確保が得意です。治験責任医師との日々のコミュニケーションを通じて、治験に参加できそうな患者さんを粘り強く探しています。

それでも十分な被験者が集まらない場合は、医局長や教授に協力を求めたり、置き手紙を残したり、場合によっては他の医師から患者さんを紹介してもらうこともあります。
現役CRAのコメント16
症例登録が進まない原因は様々です。例えば、「施設の選定が不適切である」「適格性の判定方法が複雑すぎる」「母集団が少ない」「競合する新薬の出現」「知識不足である」「医師が協力的でない」「医師との相性が悪い」「忙しくて時間がない」「治験コーディネーター(CRC)が協力的でない」などが考えられます。

被験者の登録促進は、CRA(臨床開発モニター)にとって大きな課題の一つです。

03モニタリング

CRAの代表的な業務と言えばモニタリング業務ですね。

治験がGCP(治験を実施する際に遵守すべき基準)とプロトコール(治験実施計画書)に従って行われているかを確認(モニタリング)します。

モニタリング

プロトコール(治験実施計画書)違反がないかを調査 CRF(症例報告書)のチェック SDV(原資料との照合・検証) モニタリング報告書の作成 クエリー対応

プロトコール(治験実施計画書)違反がないかを調査

違反をチェック

プロトコール(治験実施計画書)に従って治験が行われているか、効果が確認できるか、有害事象が発生していないかを調査します。

CHECKプロトコール(治験実施計画書)違反の主な調査項目

  • 被験者ごとに原資料、同意文書、説明文書が揃っている
  • 被験者が選択基準に該当し、かつ除外基準に該当しない
  • 併用禁止薬が使用されていない
  • 検査データが基準を満たしている
  • 有害事象や逸脱理由が記録されている

現役CRAのコメント23
CROでは「1CRA1プロトコール」が一般的です。「1CRA1プロトコール」とは、一人のCRA(臨床開発モニター)が、一つの新薬の治験を担当することです。

人員が不足すると、「1CRA2プロトコール」「1CRA3プロトコール」のように、一人のCRA(臨床開発モニター)が複数の治験を担当することもあります。その場合、残業も増える傾向があります。製薬会社では、一人のCRA(臨床開発モニター)が複数の治験を担当することが一般的です。

治験の期間は数ヶ月から数年と様々ですが、CRA(臨床開発モニター)は担当したプロジェクトから途中で抜けることは難しいため、期間が終わるまで同じ治験を継続して担当することが多いです。
現役CRAのコメント22
一つのプロトコールにつき、何十という施設で同時に治験が行われます。すべての施設を一人のCRA(臨床開発モニター)が担当することは難しいため、一人のCRA(臨床開発モニター)につき3~7施設ずつに分担してモニタリングを進めることが一般的です。

プロジェクトの内容によっては、一人のCRA(臨床開発モニター)が10以上の施設を担当することもあります。その場合は、モニタリング以外の業務を他の人に分担するなど、CRA(臨床開発モニター)の負担を軽減する体制がとられています。

CRF(症例報告書)のチェック

書類のチェック

CRF(症例報告書)が正確にEDCに入力されているかを確認します。特に、プロトコール(治験実施計画書)から逸脱した場合の記入方法には注意が必要です。

《 CRF(症例報告書)の主な内容 》

  • 患者の属性や病歴
  • 投与薬、併用薬
  • 全ての臨床データ(血液、尿、X線、心電図など)と所見
  • 自覚症状
  • 中止の理由
  • 有効性

現役CRAのコメント6
治験担当医師や治験コーディネーター(CRC)が経験不足の場合は、CRF(症例報告書)を作成する際に間違いが発生しやすくなります。CRA(臨床開発モニター)は、正確にEDCに入力できるようにアドバイスを行います。
現役CRAのコメント14
治験コーディネーター(CRC)が協力的でない場合、EDCへのデータ入力が遅れたり、入力してもらえなかったりすることがあります。そのような場合は、プロトコール違反やPMDA(医薬品医療機器総合機構)査察の際に問題が発生する可能性が高まります。そのため、必要に応じて催促することもあります。

優秀なCRA(臨床開発モニター)は、治験コーディネーター(CRC)と良好な協力関係を築くのが得意な方が多いです。
現役CRAのコメント19
国際共同治験では、CRF(症例報告書)のチェックやクエリー対応などは全て英語で行われます。英語が苦手な人は大変だと感じることが多いでしょう。

SDV(原資料との照合・検証)

書類のチェック

被験者の最初の登録時や、CRF(症例報告書)の最初と最後の作成時などに、原資料(電子カルテや看護師のメモなど)とCRF(症例報告書)の内容を照らし合わせて、転記漏れや転記ミスがないかを一つ一つ確認します。

《 SDVの具体例 》

  • 有害事象が回復した日などの追記がCRF(症例報告書)に記載されていない
  • カルテには「胃痛」と書かれているが、CRF(症例報告書)には「胃部不快感」と記載されている
  • カルテには「来院の3日前から喉の痛み」と書かれているが、CRF(症例報告書)には「来院日から喉の痛み」と記載されている

現役CRAのコメント7
原資料がない場合は大変です。色々な人に尋ねたりして探し出す必要があります。どうしても見つからない場合は、原資料の代わりとなる資料で対応します。

また、今後のPMDA(医薬品医療機器総合機構)の調査に備えて、必要な資料を集めて保管しておきます。
現役CRAのコメント26
SDVはすべてのCRF(症例報告書)に対して行う必要があります。しかし、最近では一部のCRF(症例報告書)だけにSDVを行うリスクベースドモニタリングという手法が採用されることがあります。

モニタリング報告書の作成

書類の作成

モニタリング報告書には、治験中のあらゆる事項を記載する必要があります。簡潔に、漏れなく記載するようにしましょう。

《 モニタリング報告書の主な入力内容 》

  • 被験者から治験参加前に文書で同意を得ているか
  • 適格な被験者だけが治験に組み込まれているか
  • 被験者の経過状況
  • 有害事象が発生していないか
  • 治験責任医師などが治験実施計画書やGCPに従っているか
  • 治験責任医師などがそれぞれの分担業務を守っているか
  • 治験薬の管理状況・情報の提供

現役CRAのコメント12
モニタリング報告書を期限内に提出することは大変です。CRA(臨床開発モニター)は「移動中に作成する」「朝一番に作成する」「事前に下書きを準備しておく」など、色々な工夫をしています。

クエリー対応

電話対応

CRF(症例報告書)に不整合なデータ(記入漏れ、誤字、番号違い、プロトコールに定められていない項目の入力など)がある場合、 品質管理の部署から確認の問い合わせがあります。

その場合は、電子カルテを見直したり、治験担当医師などに確認をするなどして、CRF(症例報告書)の修正を行う必要があります。

現役CRAのコメント8
CRA(臨床開発モニター)の業務には出張が多いです。月の3分の1ほど、担当する施設を訪問することもあります。北は北海道から南は九州・沖縄まで、新幹線や飛行機を使用して全国を飛び回ります。
現役CRAのコメント13
CRA(臨床開発モニター)にとってタイムマネジメントの能力は不可欠です。

スケジュールの管理がしっかりとできていないと、遠方へ出張したにもかかわらず治験責任医師などに会えなかったなどの困ったことが起こり得ます。その場合は、モニタリング報告書にその理由や対応策を記載する必要があります。

04有害事象対応

プロジェクトの期間はおよそ2年です。お疲れ様でした。

有害事象への対応を行います。

有害事象の対応

有害事象の対応

悩む人

有害事象とは、治験中に発生した好ましくない出来事のことです。 有害事象が発生した場合は、医師に重篤度の判断を依頼します。

重篤な有害事象が発生した場合は、IRB(治験審査委員会)に報告し、治験薬との因果関係を特定します。有害事象の発生状況や重篤度、因果関係の評価結果などの安全性に関する情報は、他の治験参加医療機関や治験責任医師と共有します。

CHECK重篤な有害事象

  • 死亡に至るもの
  • 生命を脅かすもの
  • 治療のための入院あるいは入院・加療期間の延長が必要なもの
  • 永続的あるいは重大な障害・機能不全を引き起こすもの
  • 先天異常を引き起こすもの

有害事象の対応

現役CRAのコメント18
国際共同治験では、日本だけでなくグローバルの安全性部門からも問い合わせがあります。時差もあるため、臨床開発のスケジュールが厳しくなる傾向があります。
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