CRA(臨床開発モニター)の仕事内容とやりがい
治験の開始
医療機関の関係者に治験の内容を説明した後、治験薬を納品します。

医療機関への治験の説明

治験について説明するため、医療機関で勉強会を開催します。
この勉強会では、治験薬やプロトコール(治験実施計画書)、SOP(標準業務手順書)の詳細について説明します。特に治験コーディネーター(CRC)とは、全ての疑問点が解消されるまで、繰り返し打ち合わせを行います。
勉強会には、治験責任医師や治験コーディネーター(CRC)だけでなく、看護師・臨床検査技師・薬剤師・事務局担当者など多くの関係者が参加します。
《 SOP(標準業務手順書)の主な内容 》
- 治験実施計画書
- 治験薬概要書
- 安全性情報の取り扱い
- 治験薬の管理
- モニタリング全般
- 監査
《 プロトコール(治験実施計画書)の主な内容 》
- 治験の概要
1)目的
・対象患者、治験薬名、投与量、投与期間、目指す効果など
2)対象
・選択基準(性別、年齢など最低限満たさなければならない条件)
・除外基準(合併症、基礎疾患、アレルギー、妊婦など治験に参加できない条件)
3)被験者への説明と同意に関する記述
4)目標症例数
5)治験実施期間
6)治験薬剤
7)治験方法及び投与方法 - 治験計画の背景(開発の経緯、毒性作用、薬理作用、先行試験の結果など)
- 治験の方法
1)治験の種類
2)治験のスケジュール(投与期間など)
3)被験者の募集・登録方法
4)投与方法 など - 治験の中止、脱落基準
- 被験者の機密保持(被験者は識別コードを使用、実名は症例報告書には記録しない)
- データの解析方法
《 治験薬概要書の主な内容 》
- 薬の開発経緯
- 薬の性質や組成
- 前臨床試験の結果(薬の効果や安全性など)
- 海外の臨床薬理試験のデータ
最初は訪問頻度を多くしたり、治験コーディネーター(CRC)と相談しながら医師の性格を把握したり、メールの書き方や病院特有のマナーなどに気をつけながら、信頼関係を築いていきます。診察の邪魔をして、医師を不機嫌にさせることは避けましょう。
治験薬の納品

CRA(臨床開発モニター)は、治験薬管理手順書に基づき、薬剤部の治験薬管理者に治験の内容や治験薬の取り扱いに関する説明を行います。
特に、治験実施計画書(プロトコール)に定められた禁止併用薬や用法・用量の遵守については、逸脱を防ぐために丁寧に説明を行います。
治験薬の運搬は温度管理・記録体制を備えた専門の医薬品配送業者によって行われるのが一般的です。CRA(臨床開発モニター)は、配送記録や温度管理ログなどから、治験薬が適切に輸送・受領されているかを確認します。
同じ病院で複数の治験が行われている場合は、薬剤部が混同しないように、治験名や薬効群別、五十音順などで一覧表を作成するなど、分かりやすい管理方法を提案する必要があります。また、指定された温度帯(冷蔵・室温等)での管理を適切に行われるように指導します。
《 治験薬管理手順書の主な内容 》
- 名称・剤形・成分など
- 用法・用量など
- 取り扱い方法
- 処方方法
- 回収方法
各関係者との調整

CRA(臨床開発モニター)は、治験をスムーズに進めるために、様々な立場の人と情報交換を行います。
各関係者と打ち合わせが必要な内容
- 病院の長・・治験を始めるときや、重要な情報を報告
- 治験責任医師/PI・・治験が適切に行われているかを全体的に確認
- 治験分担医師/SI・・治験が適切に行われているかを個別に確認
- 医事課・・費用
- 薬剤師/治験薬管理者・・服薬のスケジュールや方法
- 臨床検査技師・・検査項目や検査スケジュール
- 放射線技師・・検査項目やフィルムの扱い
- 看護師・・患者の対応方法
- SMA・・書類の管理方法
- CRC・・治験において終始情報を共有する
- DM・・データに不備がある場合は修正の指示を求める
- PV・・医薬品の安全性情報を確認
- QC・・モニタリング報告書などについて不備がある場合は指示を求める
- 開発企画・・治験実施計画書(プロトコール)の内容を確認
- MW/薬事・・申請書類や報告書の作成の際にアドバイスを求める

- PV・DM・CRC・SMAの仕事内容はこちら
被験者の登録促進
被験者の登録を促進します。

被験者登録の促進

治験を円滑かつ迅速に進めるには、適切な被験者の登録が不可欠です。
CRA(臨床開発モニター)は治験担当医師や治験コーディネーター(CRC)と密に連携し、医療従事者が動きやすい環境を整えることで、被験者登録を強力にサポートします。<
- 詳しくはこちら
- 被験者スクリーニング
被験者の登録促進の具体例
- 登録基準に該当する候補者が見つかりにくい場合スクリーニング条件の明確化やチェックリストの提供により、治験コーディネーター(CRC)が電子カルテから候補者を効率よく抽出できるよう支援します。
また、匿名化データをもとに治験コーディネーター(CRC)と候補者の可能性を話し合ったり、院内ポスターによる周知を提案したりするなど、多角的なアプローチで被験者の抽出作業をバックアップします。 - 候補者はいるが、同意取得に至らない場合「適格基準や治験内容が複雑で伝わりにくい」といった現場特有の課題を治験コーディネーター(CRC)からヒアリングし、説明体制や運用フローの改善を一緒に検討します。
また、患者様にとってより分かりやすい説明文書の改訂案を作成するなど、患者さんが十分に理解したうえで安心して判断できる環境づくりを後押しします。
だからこそ、治験担当医師やCRCの声をしっかり拾い上げ、ルールを守りながら「いかに現場の負担を減らし、治験を円滑に進められる環境を作れるか」を考え抜くことが、CRAとしての腕の見せ所です。
それでも十分な被験者が集まらない場合は、医局長や教授に協力を求めたり、メモや手紙を残したり、場合によっては他の医師から患者さんを紹介してもらうこともあります。
被験者の登録促進は、CRA(臨床開発モニター)にとって大きな課題の一つです。
モニタリング
治験がGCP(治験を実施する際に遵守すべき基準)とプロトコール(治験実施計画書)に従って行われているかを確認(モニタリング)します。

プロトコール(治験実施計画書)違反がないかを調査 CRF(症例報告書)のチェック SDV(原資料との照合・検証) モニタリング報告書の作成 クエリー対応
プロトコール(治験実施計画書)違反がないかを調査

プロトコール(治験実施計画書)に従って治験が行われているか、効果が確認できるか、有害事象が発生していないかを調査します。
プロトコール(治験実施計画書)違反の主な調査項目
- 被験者ごとに原資料、同意文書、説明文書が揃っている
- 被験者が選択基準に該当し、かつ除外基準に該当しない
- 併用禁止薬が使用されていない
- 検査データが基準を満たしている
- 有害事象や逸脱理由が記録されている
しかし近年は、リモートモニタリングの導入や分業の進展、IT技術の活用により、一人のCRAが平均2~4プロトコールを並行して担当するケースが増えています。なお、製薬企業内では以前から複数の治験を担当する体制が一般的です。
治験の期間は数ヶ月から数年まで様々ですが、CRA(臨床開発モニター)は被験者の安全性とデータの一貫性を担保するため、担当プロジェクトを途中で離れることが難しく、試験終了まで同じプロトコールを継続して担当することが多いです。
プロジェクトの内容によっては、一人のCRA(臨床開発モニター)が10以上の施設を担当することもあります。その場合は、モニタリング以外の業務を他の人に分担するなど、CRA(臨床開発モニター)の負担を軽減する体制がとられています。
CRF(症例報告書)データなどのチェック

EDCに入力されたデータに、抜けや矛盾がないかを1つ1つ確認します。特に、プロトコール(治験実施計画書)から逸脱した場合の記入方法には注意が必要です。
《 CRF(症例報告書)の主な内容 》
- 患者の属性や病歴
- 投与薬、併用薬
- 全ての臨床データ(血液、尿、X線、心電図など)と所見
- 自覚症状
- 中止の理由
- 有効性
優秀なCRA(臨床開発モニター)は、治験コーディネーター(CRC)と良好な協力関係を築くのが得意な方が多いです。
SDV(原資料との照合・検証)

被験者の最初の登録時や、CRF(症例報告書)の最初と最後の作成時などに、原資料(電子カルテや看護師のメモなど)とCRF(症例報告書)の内容を照らし合わせて、転記漏れや転記ミスがないかを一つ一つ確認します。
《 SDVの具体例 》
- 有害事象が回復した日などの追記がCRF(症例報告書)に記載されていない
- カルテには「胃痛」と書かれているが、CRF(症例報告書)には「胃部不快感」と記載されている
- カルテには「来院の3日前から喉の痛み」と書かれているが、CRF(症例報告書)には「来院日から喉の痛み」と記載されている
また、今後のPMDA(医薬品医療機器総合機構)の調査に備えて、必要な資料を集めて保管しておきます。
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- リスクベースドモニタリングとは何ですか?
モニタリング報告書の作成

モニタリング報告書には、治験中のあらゆる事項を記載する必要があります。簡潔に、漏れなく記載するようにしましょう。
《 モニタリング報告書の主な入力内容 》
- 被験者から治験参加前に文書で同意を得ているか
- 適格な被験者だけが治験に組み込まれているか
- 被験者の経過状況
- 有害事象が発生していないか
- 治験責任医師などが治験実施計画書やGCPに従っているか
- 治験責任医師などがそれぞれの分担業務を守っているか
- 治験薬の管理状況・情報の提供
《 モニタリング報告書の記載例 》
- 基本情報
治験名/プロトコル番号:ABC123
治験依頼者(スポンサー):株式会社ファーマ
モニタリング種別:○施設訪問 ✕電話連絡 ✕遠隔レビュー
モニタリング実施日:20●●年7月10日 時間:10:00–16:30
実施医療機関名(場所):○○大学病院 CRC室 - モニター情報
氏名:山田 太郎
所属部署/会社:臨床開発部/株式会社CRO
連絡先(電話・メール):03-1234-5678 / yamada@example.com
- 面談・連絡先
治験責任医師:佐藤 花子 先生
その他接触者・役職:看護師 ●●、薬剤部担当 ●●
- 点検内容の要約
・同意取得手順、被験者組入れ状況の確認
・治験薬保管温度記録の確認
・eCRF入力状況のレビュー など
- 重要な発見事項・事実
1. 治験薬保管温度の逸脱検知
20●●/6/28 02:00–06:00 の間、保管温度が 2 °C を下回り 1 °C 付近で推移していたことをデータロガーで確認。
温度逸脱報告書(IR-Temp-20●●0628)が作成済み。
2. Visit(2回目) バイタルサイン外れ値
被験者 ID 003 で収縮期血圧 180 mmHg が記録されたが、eCRF に医師コメントなし。
3. 同意説明補助資料の最新版未使用
被験者 ID 007 に対し、旧版(V2.0)の補助資料を使用して説明していた。
- 逸脱・欠陥
1. プロトコル逸脱(組入れ基準違反)
被験者 ID 005 が HbA1c 8.2 % で組入れられた(許容上限 8.0 %)。
→ 重大逸脱として報告予定(Deviation-20●●0710-01)。
2. 必須文書欠落
試験開始前安全性報告書最新版(DSUR 20●●)が Investigator Site File に未綴じ。
3. 治験薬帳簿への署名漏れ
20●●/07/05 交付分の薬剤師署名欄が空欄。
- 是正措置・予防措置(CAPA)
・逸脱 1:治験責任医師が速やかに IRB・スポンサーへ報告し、継続評価の可否を判断。
・逸脱 2:DSURを即日提出・ファイリング、ファイルチェックリストを更新。
・逸脱 3:薬剤部でダブルチェック手順を追加。7 月末までに SOP 改訂。
- 結論・推奨事項
・逸脱 1 は重大のため迅速報告を推奨。
・温度逸脱は安定性データ確認後、治験薬使用可否を判断。
・次回訪問で是正状況を重点確認する。
- 次回モニタリング予定
日時:20●●年8月20日(予定)
目的/範囲:CAPA 実施状況確認、SDV 30 % 追加実施
- 添付資料
1. 温度逸脱報告書 IR-Temp-20●●0628
2. Deviation-20●●0710-01 報告書下書き
3. 修正後ファイルチェックリスト(ドラフト)
- 署名
モニター署名:山田 太郎
日付:20●●年7月15日
リモートモニタリングの普及と変化
COVID-19のパンデミックは、臨床試験におけるリモートモニタリングの導入を加速させ、CRA(臨床開発モニター)の働き方に変化をもたらしました。
これまで、CRA(臨床開発モニター)の業務は主に治験実施医療機関へ直接訪問し、原資料(診療録など)と治験データを照合・検証するSDV(原資料との照合・検証)を対面で実施することでした。
しかし、パンデミック下での移動制限などの影響を受け、統計的手法によって中央でデータを監視する「セントラルモニタリング」の導入が一気に加速しました。さらに、FDA(アメリカ食品医薬品局)、EMA(欧州医薬品庁)、PMDA(医薬品医療機器総合機構)といった主要な規制当局も特例的なガイダンスを発出し、一定の要件下でのリモートでのSDV(遠隔SDV)の実施を後押ししました。
このような方針転換を受け、EDC(治験データを収集・管理するための電子化システムのこと)などを活用したリモートでのデータレビューが急速に広まりました。
さらに、リモートモニタリングを安全かつ効率的に実施するための技術革新も進んでいます。たとえば、CRA(臨床開発モニター)が医療機関の電子カルテに限定的かつ安全にアクセスできる仕組みや、患者の個人情報を自動的にマスキング(秘匿化)する技術が実用化されつつあり、プライバシーの保護と業務効率の向上が同時に実現しつつあります。
これらの変化により、CRA(臨床開発モニター)が出張や移動に費やす時間は削減され、業務の柔軟性が向上しました。
今後の臨床試験では、医療機関への訪問(オンサイト)と遠隔(リモート)での確認を効果的に組み合わせた「ハイブリッド型モニタリング」が標準的な体制として定着していくと考えられます。
- もっと深く知りたい方はこちら
クエリー対応

CRF(症例報告書)に不整合なデータ(記入漏れ、誤字、番号違い、プロトコールに定められていない項目の入力など)がある場合、 品質管理の部署から確認の問い合わせがあります。
その場合は、電子カルテを見直したり、治験担当医師などに確認をするなどして、CRF(症例報告書)の修正を行う必要があります。
出張の頻度はプロジェクトの進捗状況や企業の方針によって異なりますが、遠方の医療機関を複数担当する場合には、月の約3分の1程度が出張となることもあります。北は北海道から南は九州・沖縄まで、新幹線や飛行機を使用して全国を飛び回ります。
スケジュールの管理がしっかりとできていないと、遠方へ出張したにもかかわらず治験責任医師などに会えなかったなどの困ったことが起こり得ます。その場合は、モニタリング報告書にその理由や対応策を記載する必要があります。
有害事象対応
有害事象への対応を行います。

有害事象の対応

有害事象とは、治験中に発生した好ましくない出来事のことです。 有害事象が発生した場合は、医師に重篤度の判断を依頼します。
重篤な有害事象が発生した場合は、IRB(治験審査委員会)に報告し、治験薬との因果関係を特定します。有害事象の発生状況や重篤度、因果関係の評価結果などの安全性に関する情報は、他の治験参加医療機関や治験責任医師と共有します。
重篤な有害事象
- 死亡に至るもの
- 生命を脅かすもの
- 治療のための入院あるいは入院・加療期間の延長が必要なもの
- 永続的あるいは重大な障害・機能不全を引き起こすもの
- 先天異常を引き起こすもの














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